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2024.10.1

女性の健康を考える

毎年10月は乳がんについての啓発キャンペーンが多く⾏われます。日本でも「認定NPO法人J.POSH日本乳がんピンクリボン運動」が2002年から活動を始め、年々拡⼤しています。

ピンクリボンとは、乳がんの正しい知識を広め、乳がん検診の早期受診を推進すること、などを目的として行われる世界規模の啓発キャンペーンです。ピンクリボンのはじまりは、アメリカの乳がんで亡くなられた患者の家族が、「このような悲しい出来事が繰り返されないように」と願いを込めて作ったリボンでした。乳がんは、日本人女性がかかる「がん」としても最も多く、またその他にも女性が気をつけなければならない「がん」は、子宮頸がん、子宮体がん、大腸がんなどがあります。

がんは、早期発見が重要です。そのためには、検診やセルフチェックを行いご自身の身体をよく知っておきましょう。

女性は、更年期や閉経を迎える年齢に差し掛かると、循環器のトラブルが急増する傾向がありますが、これには明確な理由があります。女性は、更年期や閉経が近づく頃とエストロゲン(女性ホルモン)が減少します。エストロゲンは、血管を広げる作用や抗酸化作用、コレステロールの代謝をよくする作用などを担っていて、エストロゲンの分泌が減ることで高血圧、高コレステロール、高血糖などに陥りやすく、血管の老化が一気に進行し、脳梗塞や心筋梗塞など循環器のトラブルのリスクが急激に高まるのです。

更年期以降の女性は、一度ご自身の生活習慣の見直しを行い、より健康的な生活を意識しましょう。また、定期的に健康診断を受け、自覚のない身体の異常がないかをしっかり確認することも重要です。そして予防として大切なことは、ストレスを避け、必要な栄養をしっかり摂ることです。

また、身体の重要な構成成分の一つであるたんぱく質や腸、ひいては全身の健康を守る食物繊維なども積極的に摂るよう心がけましょう。

ビタミンDは、脂溶性のビタミンです。水に溶けにくく、油脂に溶けやすい性質があります。食品から得られるビタミンDには、しいたけなどのきのこ類に含まれるビタミンD2(植物由来)と、鮭などの魚類や卵などに含まれるビタミンD3(動物由来)があります。ビタミンの多くは、身体の中でつくることができないため、食品から摂取しなければなりません。しかし、ビタミンDは、食事だけでなく、日光(紫外線)に当たることによって、体内でつくることができるという特性があります。

ビタミンDは、骨粗しょう症だけでなく感染症や心血管疾患や神経筋疾患、自己免疫疾患発症にも関連するといわれ、また、近年の実験研究から、がん細胞の細胞増殖を抑えたり、細胞死を促進したりする作用により、がんを予防する効果があるのではないかと考えられています。

血中ビタミンD濃度の上昇はがん罹患リスク低下と関連

国立がん研究センターは「血中ビタミンD濃度とがん罹患リスク」との関連を調べた結果、血中ビタミンD濃度が上昇すると、何らかのがんに罹患するリスクが低下することが分かりました。

ビタミンDサプリで消化管がん患者の再発死亡リスクが73%も減少

東京慈恵会医科大学分子疫学研究部浦島充佳教授らは、消化管がん患者がビタミンDサプリメント2,000IUの連日内服した場合、プラセボ(偽薬)に比べて再発・死亡リスクが73%減少していたことを明らかにしました。その研究成果は2023年8月23日にJAMA Network Open 誌に掲載されました。

血中ビタミンD濃度と動脈硬化の研究

・ビタミンD不足が動脈硬化のリスクを高める。(2018年 大阪公立大学・理化学研究所)

・ビタミンDサプリが動脈硬化を速やかに低下させる(2018年米国オーガスタ大学ジョージア予防研究所)

・ビタミンD3濃度が最も低い群は、死亡するか脳卒中になる確率が77%高く、冠動脈性心疾患を発症する確率が50%近く高かった(2009年ソルトレークシティ インターマウンテン医療センター)

・血中ビタミンD濃度の高い人は2型糖尿病の発症リスクが低い(2023年米国内科学会-ACP)

・ビタミンDを補給している高齢者は、摂取していない高齢者に比べ、深刻な心血管イベント発症が低下する ※心血管イベントとは、心筋梗塞や脳梗塞などに代表される心血管系の病気のこと(2023年 BMJ メルボルン大学・シドニー大学)

98%の日本人が「ビタミンD不足」に該当 国内初の基準値を公表、植物由来のビタミンDはほぼ検出されず

東京慈恵会医科大学 臨床検査医学講座 越智小枝教授・整形外科学講座 斎藤 充教授らは、2019年4月から2020年3月までの期間に東京都内で健康診断を受けた5,518人を対象に調査を実施し、98%がビタミンD不足に該当していたことを明らかにしました。本研究の成果は2023年4月23日に The Journal of Nutrition 誌 Volume 153,Issue4,p1253に掲載されました。

重要な栄養素であるビタミンDですが日本人のほとんどは不足していることはわかりました。今回の研究結果から日本人の食生活の変化によって、現代社会では特に植物由来のビタミンDが摂取されなくなったことが推察されます。今後の超高齢化社会へ向け、ビタミンDの摂取はますます重要となっています。